Jacked - GTAの夏
2012-05-17


あっという間に歴史になってしまったんだね。


  Jacked: The Unauthrized Behind-the-scenes Story Of Grand Theft Auto[LINK]


ビデオゲームを、子供の遊びから大人が本気で楽しめるものに変え、ビデオゲームの売り上げを、大ヒットNo.1の映画の売り上げを遥かに超える額にまで押し上げた、 グランド・セフト・オート (GTA)シリーズの開発にまつわる話を描いた本。


犯罪者を主人公にし、品行方正な人々からの悪評を糧にして知名度を広げ、新しいゲームの世界を切り開いたものの、高まる一方の悪評に油を注ぐどころか爆弾を投げ込んでしまい、窮地に立たされてしまう。会社設立以来の仲間が次々やめる事態を乗り越え、今ももっとも注目されるゲームを出し続けているけれど、設立当時とはあまりにも雰囲気が変わってしまった、そんな会社の内幕が描かれています。


GTAには San Andreas が多分もう下火になったころに初めて出会って、はまった。


この本を読んで、僕がはまったころにはこのシリーズは曲がり角を迎えていたのだと分かった。


最初のGTAは、開発初期には Race 'n' Chase という名前で、主人公は警官だった。車は車道を走らないといけないし、信号も守らないといけない。歩行者を轢くなんてありえなかった。 開発者たち自身がゲームのつまらなさにあきれ、開発は行き詰った。


ある日、全面的に方向転換して、GTAが生まれる。車は盗むもので、どこを走るのも自由、人を轢いたり他の車にぶつけると点が入る。主人公はギャングから電話でミッションの指示を受けるが、ミッションを実行せずに、好きに街中を走り回っていてもいい。


当時のNo.1ゲームは Tomb Raider などで、もう3D表示が当たり前だったのに、GTAは街を上から見下ろす視点の2Dゲームだった。なので爆発的に売れはしなかったが、じわじわといつまでも売れ続け、続編を作らない理由がないぐらいには売れた。


そもそも、GTAの宣伝戦略はとんでもなかった。PRディレクターは、以前ある歌手を売り出すために、その歌手が「私のハムスターを食べた!」という見出しを大衆紙 SUN に出させて成功したりした人物で、そんな大物PRをゲームのために雇うこと自体前例がなかった。このディレクターは、ゲーム発売前からしかるべき政治家に情報をリークして、議会でわざとGTAを 叩かせた。議会でのやり取りの音声を使ったラジオコマーシャルまで作った。新聞もこぞってこの問題を取り上げた。これにより、PRディレクターは「12〜13百万人にアピールできた」と嘯いた。今でいう炎上マーケティング。


この宣伝戦略はGTAシリーズの伝統になり、アメリカではヒラリー・クリントンを含む多数の議員からも叩かれ続けたが、当初は旨く行っていた。SAの Hot Coffee 問題が起きるまでは。


あれが起きてしまった理由は、宣伝効果を狙ったからではなくて、開発者、とくにその親玉の Sam Houser のビデオゲームかくあるべしという思い入れだった。映画では犯罪者が主人公の映画は当たり前なのに、なぜビデオゲームはそうでないのか。大人をターゲットにするなら、犯罪も描かなければならない。ここまではよかった。


もう一つ、大人向け映画なら(18禁の映画ではなくても)当たり前の要素をビデオゲームに持ち込むのは Sam にとって必然だった。なので、SAにその要素は盛り込まれたが、発売前に社内で議論になり、販売サイドの懸念によって、その要素は「封印」された。 Sam は通常版が充分売れてから、18禁版をリリースするつもりだった。18禁版は大手量販店が扱わないので、子供に売ろうとしている、と非難される余地は少ない。通常版が売れた後なら、売り上げにも影響は出ない。



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