最近、文庫になったのを見つけて読んで、はまって、何回か読み返している。
続・100年予測 ジョージ・フリードマン ハヤカワ・ノンフィクション文庫
続、というからには「100年予測」という前編もある。そっちも読んで、読み物としてはそっちの方が楽しかったりするので、別途感想を書きたいのだけど、続、の方は、別の面白さがある。
100年予測の原題は、The Next 100 Years なのに対し、続の原題は、The Next Decade つまり、10年予測だ。
予測、というタイトルなんだけど、実は、近年に何が起こったかの説明が充実している。僕にとって一番目新しく、ありがたかったのは、現在の中東情勢の成り立ちに関する説明。
僕の今までの認識は、せいぜい、もともとあの辺は第二次大戦の頃までイギリスの植民地だったのだけど、ユダヤ人が今のイスラエルあたりの土地を買い占めてパレスチナ人を追い出し、イスラエルという国を数千年ぶりにもう一度作った。周りのアラブ人が怒って中東戦争が何回か起きたけど、イスラエルは強かったので潰されず、今に至る、という程度。
それが、この本によると、まず、今あの辺にある国の多くは、昔からあった国ではなく、国境も人工的に引いたものなら、そこに住む人々も先祖代々その国の国民という意識があるわけでもない。多くの人は数世代前には中東の中の違う場所に住んでいたかもしれない。第二次大戦後にいくつもの国が勝手な取り決めのものとに作られた中で、政治的に自分に近い国へ移住した人もいただろうし、たまたまその時期にそこに住んでいたので、その国の国民になってしまった人も多かったということ。
なんだかタイミングよく以下の記事が某所で話題になっていたのでリンクを貼る。
つまり、第一次大戦までオスマントルコ帝国の州のひとつだった、シリアを、フランスとイギリスが恣意的に南北に分割して占領し、植民地化したという話。北部を取ったのがフランスで、パレスチナを含む南部をイギリスがとった。
で、気がついただろうか。今のシリアはパレスチナの北にある国だが、むかしはパレスチナまで含んでオスマントルコのシリア州だったのだ。なので、今のシリアは、パレスチナも、ヨルダンもレバノンも皆シリアの一部であり、取り戻したいと思っている。
レバノンという国も、フランスが勝手に作った国で、あのあたりは元々キリスト教徒、ユダヤ教徒、イスラム教徒が入り混じって住んでいて、全部アラブ人なのだけど、レバノン近辺は特にキリスト教徒が比較的多かった。そこで、キリスト教徒が多数派になるような形で国を作って、近所のレバノン山から名前を取ってレバノンという国にした。
一方、ヨルダンは、イギリスの政略の結果。アラビア半島では、サウド家とかハシミテ家とかいういくつかの氏族が勢力を競っていて、イギリスはどこに対しても「協力してくれたら、君らにアラビア半島をあげるからね」と甘い約束をしていた。で、結局アラビア半島を得たのはサウド家で、これがサウジアラビアになる。一方、ハシミテ家は「残念賞」として、イラクをもらった。
ところが、ハシミテ家の一部はイラクに行くのを拒んだらしく、アラビア半島の最北部に移住させられた。そこはイギリスの委任統治領トランスヨルダン。「ヨルダン川のあっち側」という意味だ。ヨルダン側の向こう側にあったのでそう呼ばれた。えっ?知ってるって?それが元になって現在のヨルダン王国ができた。正式名称は今でもヨルダン・ハシミテ王国という。
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