イミテーション・ゲームでうれし泣き
2015-03-13


いくつものテーマが重なりあう、嘘のように精緻に組みあがった、それでいて実話なストーリー。 五つ星級のおすすめ。


 イミテーションゲーム (原題: The Imitation Game)


第二次大戦時のドイツ軍の暗号と、それを解読したイギリスの数学者達。


暗号解読に使われた、それまでに例を見ない特別な機械。


凡人には理解できない天才の思考と、理解されない天才の苦悩。


イギリスの同盟国であるソ連との微妙な関係。


暗号の解読結果の利用に伴う、理不尽だが逃れようのない制約。


女性への偏見、同性愛者に対する迫害。


天才が成し遂げたいくつもの偉業とそれに見合わない不幸な晩年。


カンバーバッチが主人公アラン・チューリングを演じたのは大成功。論理的であることにおいて圧倒的な強さを持ちながら、人間的であることにおいて著しい弱みを見せる、チューリングの姿はBBCのシャーロックにそのまま重なって見える。


すごく楽しみにしていた映画で、うきうきしながら見始めたのだけど、始まって間もなく、説明しがたい感情の高ぶりが襲ってきて、嬉しくて泣きそうになりながら見ていた。終盤、話は暗くなるのだけど、決して悲しいからではない理由で、映画が終わる頃にはぼろぼろ泣いていた。つまり、あれですよ。美味しんぼで、故郷の味のご馳走を出された京極さんが、

 「なんちゅうもんを食わせてくれたんや…なんちゅうもんを…」 といってぼろぼろ泣いていたのと同じ状態。  「これに比べると○○ー○ー・ゲームはカスや。」 あ、書いちゃった。書かないでおこうと思ったのに。そもそも比べるのが間違いや。

うちの奥さんと二人で見に行きました。奥さんも、「よかったねー」と言っていたのは、決してカンバーバッチファンだからだけではない様子。「こんなにいい映画を観たのは久しぶり」、とも。


シャーロックのカンバーバッチ以外にも、いろんなドラマや映画で見覚えのある役者が出てきます。キーラ・ナイトレイは別格として、まず、日本でも今をときめくダウントン・アビーのブランソン役のアレン・リーチは、チューリングと一緒に働く数学者の一人。MI6の黒幕ミンギスを演じたのは、ロバート・ダウニーJr主演の映画のシャーロック・ホームズの中で、悪役ブラックウッド卿で出ていたマーク・ストロング。彼はキック・アスでもレッド・ミストの父ちゃんとして出ていたり、すごくよく見かける気がする。それから結構強烈な印象を残したのは、チューリングをあからさまに敵視するデニストン中佐で、この人はゲーム・オブ・スローンズでラニスター家の当主、タイウィン・ラニスターをやってました。ウェスタロス最大の権力者であり、かつ実の息子のティリオンを忌み嫌うあたり、キャラがデニストン中佐と同じ。ダンス・ウッドって人なのか。


あと、初めてみる人ですが、学生の頃のチューリング役、アレックス・ローサーの演技も見事でした。人間関係に不器用なチューリングが唯一の親しい友人に対してもつ様々な思いを表情に浮かべてみせてました。


以下、ネタバレします。見ていない人は見てからどうぞ。








さて、もういいかな。


アラン・チューリングのエニグマ暗号解読の話や、計算機科学の創始者としての業績や、数奇な人生については以前から色んなところで読んだことがあったので、話の大筋は知っていたのだけど、映画にして絵になりそうなのは暗号解読だけなので、見る前には、暗号解読したらめでたしめでたしで終わる映画かと思い込んでました。とんでもない思いこみで、暗号や解読方法の詳細にこそ立ち入らないものの、チューリングの重層的な業績をうかがい知れるぐらいには色んな要素を描き込んでました。


エニグマ暗号解読自体については、かつて月間ASCIIに連載されていて、本にもなった


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